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2019年12月13日 犯罪は減少傾向だが粗暴犯はあまり減っていない

他人を攻撃する心理

あおり運転の挙句,被害者に罵声を浴びせながら殴打する者。元交際相手の気を引こうと相手を辱めるような言動を執拗に繰り返す者。こうした人と身近に出会うことはまれかもしれませんが,マス・メディアなどを通して聞いたことはあるのではないでしょうか。これらに共通するのは,当然ですが,行為が他人への攻撃であるということです。このコラムでは,誰でも知っているだろう他人を攻撃する人の心理を考えてみましょう。

突然ですが,質問です。日本で起こっている犯罪は,この10年間で増えているでしょうか?減っているでしょうか?横ばいでしょうか?

それでは,最初に他人を攻撃することに関係する犯罪がどれくらい起こっているのかを押さえておきましょう。

他人を攻撃する心理とは?...あおり運転問題や親密関係での暴力を考える〈東北大コラム〉

法務省が示す統計(犯罪白書)を見ると,答えは,日本ではこの10年間で犯罪が大幅に減っています。
この原因として,車上ねらいや自転車盗,あるいは空き巣などの窃盗が大幅に減少している(削減できている)ためであるとされています。

他人を攻撃する心理とは?...あおり運転問題や親密関係での暴力を考える〈東北大コラム〉

一方,他人を攻撃する行為,いわゆる粗暴犯(傷害,暴行,脅迫)は,実はあまり減っていません。
犯罪全体では,その数は大幅に減っているように見えますが,実は犯罪の種類によって,その様相は全く異なるのです。つまり,本コラムで取り上げる他人を攻撃する人というのは,他の犯罪ほど削減できておらず,年間約6万件を推移しているのです。

それでは,こうした人たちが他人を攻撃する時,その人の内面ではどのようなことが起こっているのでしょうか。以下では,他人を攻撃する人の心の過程を見てみましょう。

心理学では他人への攻撃を,行動が起こるまでの心の中の過程によって二つの形態に分けます。一つは戦略的攻撃といわれる形態です。これは,例えば,自分の要求を通すためや自分を強く見せるため,はたまた相手の気を引こうとして,暴言を吐いたり,暴力を振るったりするような場合です。

もう一つは衝動的攻撃といわれる形態です。これは,例えば,車を運転中に自分の前に割り込まれたと思い,カッとなってその車を煽ったり,怒りのあまりに車から降りて暴言や暴力を振るったりするような場合です。

それでは,この二つの攻撃にどのような心の過程が存在すると考えられているのでしょうか。戦略的攻撃では,社会的葛藤に遭遇した場合に,意識的な判断を繰り返すことで攻撃行動が起こります。一方,衝動的攻撃では,社会的葛藤から生じた怒りなどの強い不快感情が意識的な判断を妨害する一方,その人の過去の経験から作られる行動手順(スクリプト)を脳内で自動的に活性化させ,結果的に行動手順に沿った攻撃行動が発現します。

大雑把に言うならば,前者が意識的・意図的に行われる攻撃行動であり,後者が無意識的・自動的に生じる攻撃行動と言えるでしょう。また,前者は意識が介在している分,自分で意識的に制御がしやすいと言えますが,後者は意識を介在せず感情的に行動が起こっているがゆえ,自分で意識的に制御することが難しいとも言えるでしょう。

この意識過程はお互いに影響しあうことも知られています。例えば,別の車が自分の車の前に割り込んできたと思い,強烈な怒りを感じる場合,怒りが暴力を振るってはいけないという意識的な抑制を妨げてしまうため,相手を衝動的に煽ったり,暴力を振るったりといった行動が発現しやすくなります。逆に,社会的葛藤によって生じる怒りが弱い場合には,意識的な判断が優先され,怒りに任せて行動してはいけないと衝動的な行動を抑制するように作用するのです。

コラムの当初にある,あおり運転の挙句,被害者に罵声を浴びせながら殴打する者は,怒りに任せて行動に至っているとみるならば,衝動的攻撃に走っていると理解できるでしょう。また,元交際相手の気を引こうと相手を辱めるような言動をとったり,時に暴力を振ったりすることを執拗に繰り返す者は,相手の気を引くという目的に沿って戦略的攻撃を行っていると理解できるでしょう。このように,表面的には同じような攻撃行動を示す厄介者といえども,実は,その心の過程は異なっているのです。
<11/9(土) 8:10配信仙台放送より>

犯罪件数の統計やニュースでよく取り上げられるのが、最近は犯罪件数が減少傾向にあるということです。

しかし、一般の多くの人が肌で感じている犯罪や治安状況は異なると思います。
いわゆる体感治安というものですが、これは減少傾向よりも増加傾向にあると思います。

それは窃盗犯のようなどちらかというとそれほど罪の重くない犯罪は減少しているものの、殺人や暴力的な凶悪犯罪は増加しているため、犯罪という全体的な印象は悪く感じるのでしょう。

このコラムにも記載されているように、粗暴犯(傷害,暴行,脅迫)という他人を攻撃する行為はあまり減っていないということです。

ニュースやワイドショーであおり運転による暴力行為や威圧的な音声の録音データが繰り返し報道されることで、その印象がとても強くなるのでしょう。
(ある政治家の「この、ハゲー」という暴言は記憶に新しいと思います)

また、SNSにアップされた従業員や客の悪ふざけ動画も印象には残ります。

犯罪の質や種類は時代によって変化します。最近は特に変質化のスピードが早いように感じます。

少し前は防犯対策と言えば、主に窃盗犯に対する対策というイメージが強かったかもしれませんが、今後は粗暴犯に対する対策がより重要になるかもしれません。

音声データや隠し撮りなども自衛手段として注目されています。

防犯カメラも映像を記録するだけでなく、音声や日時、その場で警告メッセージを流すなど、様々な機能が求められるでしょう。

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