防犯ブログ

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2006年08月10日 ロシア エルミタージュ美術館 経費削減で泥棒天国

エルミタージュ美術館というと、エカチェリーナ二世が集めた収集品が有名で、当初は王侯貴族の収集品を収めるだけで、一般向けの開館されていませんでしたが、十九世紀末に一般向けに開館。
日本でも「250万点を超える芸術作品を見に行く」などの旅が企画されるほどその財宝のすばらしさは有名です。

美術館というと、警備員など管理者が開館時間は各部屋にたっているとともに、監視カメラや侵入検知センサー、絵画持ち出し検知用センサーなどが張り巡らされ閉館時間も万全の警備をしているというイメージがあります。

ところが、このエルミタージュ美術館では7月31日、18〜20世紀の宝飾品やイコン(聖画像)など計221点の展示物が盗まれていたことが判明しました。
被害総額は少なくとも約1億3000万ルーブル(約5億6000万円)に上るとされます。

この報道を見ただけでもその被害額に驚くとともに、どうしてそんなに沢山盗まれるのか?という疑問が湧いてきますが、ロシア文化遺産保護局のボヤルスコフ長官は7日の記者会見で、ロシア国内の美術館、博物館では高価な文化財に対する窃盗事件が毎年50〜100件程度起きている、と明らかにしました。

 エルミタージュ美術館での窃盗被害に対しても、同長官は「たまたまでなく、自然の法則」としています。

 90年代の経済混乱で学芸員や警備係の給料が大幅に減り、質が低下したのが最大の原因ということなのです。

 文化財をコンピューター登録して集中管理するといった対策も資金難から進んでいません。
エルミタージュでも99年から約200万点の文化財についてコンピューター登録を始めましたが、作業が済んだのは15万3000点だけで、ボヤルスコフ長官は「この調子ではあと70年はかかる」と話しています。

窃盗被害に遭っているのはエルミタージュ美術館だけではありません。

モスクワの国立文学・芸術公文書館でも数億円相当の作品が持ち去られています。
ロシア全体として、旧ソ連崩壊後、財政難などで所蔵品の管理がずさんになっていたことが浮き彫りになった形です。

エルミタージュの盗難事件では、昨年秋に急死した、宝飾品が属する部門の女性警備員の夫と息子ら3人が拘束され、取り調べを受けています。やはり関係者が関与しているということです。

人の心は不思議なもので、管理がきっちりされていると犯罪は発生しにくいものです。
最初に盗んだ時に誰にも気付かれなかったのでしょう。
「所蔵品の管理がずさんでほとんどされていない」ということが明らかになり、最終的に221点もの膨大な美術品が被害に遭ってしまいました。
「経済的混乱で学芸員や警備係の給料が大幅に減り、質が低下したのが最大の原因」とありますが、携わる人間がその守るべきものを大切に考えず、自分の職務に社会的使命感を持っていないということが拍車をかけているのだと思います。

年50件〜100件の美術品窃盗。
その国家的損失を考えると、「抑止」としての警備システムの重要性・必要性を改めて感じます。

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