諏訪地方で不審火が相次ぎ、4月中旬からの被害は19件を数える。放置車両や空き家などが燃やされるケースが多いが、中学校の体育館や人の住むアパートなど、対象がエスカレートしている例もある。「眠れぬ夜」を解消しようと、警察、消防、そして住民は警戒を強めている。
■前年比大幅増
諏訪広域消防本部管内(岡谷、諏訪、茅野市、下諏訪、富士見町、原村)では、4月13日に諏訪市豊田の住宅街で農作業小屋を焼いたのを皮切りに、2日夕までに諏訪市7件、岡谷市5件、茅野市3件、富士見町3件、下諏訪町1件、計19件の不審火(原因不明含む)が発生。昨年の年間10件から大幅に増えている。
被害が集中しているのは、諏訪湖南東の諏訪市豊田、湖南地区。4月20日までに起きた3件は半径500メートルほどの狭い範囲だ。この地区では04年に4件の不審火があったほか、昨年にも起きている。その後は他市町村でも発生。対象は農作業小屋や放置車両などが多かったが、先月21日には茅野市宮川のアパートのガスボンベが焼け、初めて人が住む建物が標的になった。幸いにもけが人は出ていない。
■模倣犯も出現か
県警は諏訪、岡谷、茅野の3署に、捜査1課、機動捜査隊、鑑識課も加え、捜査本部に準じる150〜200人態勢で捜査している。諏訪署はすでに400世帯、1000人以上の聞き込みを行った。犯人が複数いる可能性も視野に入れ捜査をしているという。
発生時間は19件中13件が午後10時40分ごろから午前3時20分ごろまでの深夜。だが、岡谷市内の5件のうち4件は朝や夕方に起きるなど、必ずしも一貫性はない。模倣犯も出現しているとの見方もある。不審火の情報を募るフリーダイヤル(電話0120・266・171)には十数件の声が寄せられたが、犯人に直結する有力な情報は得られていない。諏訪署の神谷明副署長は「一日も早く解決し、住民の不安を取り除きたい」と話した。
■連日の防犯活動
諏訪市内では毎晩、地元の消防団員60〜80人ほどが巡回を続ける。しかし、深夜の活動で団員の疲労はピーク。伊藤功・諏訪消防署長は長期化を懸念し「犯人が見つかることが一番だが団員の体調も心配だ」と気遣う。
諏訪市は市長名で市内96区長に「寝る前に自宅周りを確認」「燃えやすい物は置かない」などと要請。1日2回、防災無線を使い、「自宅の外灯をつけて明るくして」などと呼び掛けている。職員は交代で車両による夜間巡回も続けている。
防犯意識の高まりで、諏訪市内のホームセンターには不審火があるたびにセンサーつきライトの問い合わせがあり、購入者も増えているという。
住民も自主的活動を展開しているが、豊田地区の男性は「サイレンの音が聞こえるだけでも跳び起きる」というほど神経をとがらせている。
◇「眠れぬ夜」住民パトロール
住宅街に田んぼが点在する諏訪市豊田地区。中でも小川区は4月13日未明、一連の不審火で最初に火災が発生した地域だ。夜間は車や人の通りも少ない。静けさのなかでカエルの合唱が響く。そのなか、どこからともなく「カラーン、カラーン」と甲高い鐘の音が聞こえる。同区住民によるパトロールの音だ。そのパトロールに同行した。
パトロールする住民は、物陰や空き家などを重点的に警戒する。2人1組となり、担当区域を巡回する。小泉義美・小川区長(56)は「地域の安全・安心を守るため始めた」と話す。見慣れない不審車両などは日誌に書き込み、次にパトロールする人への連絡事項とする。
パトロールに参加した農業の男性(64)は「住民だから空き家なども把握している」と話す。公務員の男性(46)は「家の周りなどを気を付けるようになった。しかし、放火されるとは思って暮してはいないので」と不安も漏らす。一方、「消防団だけでは大変。地域は自らで守りたい」とも言う。
「犯人が捕まるまで安心できない」。地域住民の共通の思いだ。【池乗有衣】
6月3日朝刊
(毎日新聞) - 6月3日